アクセルを踏んでいないのに車が動く「クリープ現象」とは?

ブレーキから足を離した瞬間に、車が勝手に動いたという経験をしたことがある方も多いかもしれません。これは「クリープ現象」と呼ばれるもので、AT車で必ずみられる現象です。
今回は、そんなクリープ現象について仕組みやメリット、注意点などをご紹介します。

AT車だけの機能!クリープ現象とは

クリープ現象は、AT車のエンジンがアイドリング状態で動くことで生じます。ギアが「P(パーキング)」または「N(ニュートラル)」以外のときは、ブレーキから足を離した際にアクセルを踏んでいなくても車が動き出します。クリープ現象はAT車特有のもので、MT車では起きません。なお「クリープ(creep)」には“ゆっくり動く”という意味があり、別名は「摺(す)り足現象」とも呼ばれます。

クリープ現象の仕組みには、トルクコンバーターが関係しています。トルクコンバーターは、液体を用いてエンジンからタイヤへと動力を伝達する装置です。液体を介してエンジンの回転力をタイヤに伝えているため、エンジンとタイヤを完全には切り離されず、クリープ現象が起きます。MT車でクリープ現象が起こらないのは、トルクコンバーターが搭載されていないだけでなくタイヤへの動力の伝達をクラッチのオン・オフで行っているためです。エンジンとタイヤが完全に切り離されているので、アクセルを踏まなければ車は動きません。

押さえておこう!クリープ現象のメリットと注意点

クリープ現象を効果的に活用するために、メリットと注意点を理解しておくことが大切です。

メリットとしてあげられるのは、ブレーキ操作のみで駐車できるという点です。アクセルを踏まなくても車がゆっくりと動くので、車体の角度や車止めとの距離感に集中しながら駐車することが可能です。また、渋滞時には、車が進むたびにアクセルを踏む必要がないので低速走行で安全に運転が可能です。上り坂でブレーキからアクセルへと踏み替える際に後退しにくくなるいう利点もあります。

注意点としてあげられるのは、運転者の意思とは関係なく車が動き出すということです。ギアを「D(ドライブ)」や「R(リバース)」にしたままブレーキから足を離した場合、クリープ現象によって車は動き出します。近くに車があったり歩行者がいたりすると危険ですので、ブレーキから足を離す際は必ず、ギアが「P(パーキング)」または「N(ニュートラル)」になっているかどうかを確認することが大切です。
クリープ現象は、駐車時や渋滞時に役立つ低速運転を実現する便利な機能です。車を発進させるときに一気にアクセルを踏むのではなく、ブレーキから足を離してクリープ現象を起こしてからアクセルを踏めば低燃費走行となり、ガソリン代の節約にもつながります。

AT車に特有のクリープ現象。AT車を運転する機会が多い方は、安全運転を実現するために仕組みや利点・注意点を知っておくことが大切です。